・関税の仕組みを理解できる
・関税がなぜ上がったのかが論理的に理解できる
・生活費への影響があるもの・ないものがわかる
・生活費が上がる品目についての対策方法がわかる
2025年からトランプ大統領が再選しました。トランプ政権が中国製品を中心とした全輸入品を対象に10%〜最大125%の関税をかけることを発表しました。
経済ニュースでよく聞く「関税」ですが、仕組みや目的は分かっていても実際の家計支出がどう変わるのか理解できているでしょうか。
読み終えた時に「いくら支出が増えそうだな」となれるよう、論理的に関税の影響について解説します。
【関税とは】目に見えないコストの正体
関税とは
関税とはモノの輸出入においてかけられる税金です。輸入品の種類ごとに税率が設定され、輸入者が負担する仕組みです。
この図は日本の会社がアメリカで車を売った時の取引の流れを表したものです。

- A社がB社(A社の代理店)へ輸出する
- B社が顧客へ販売する
- A社とB社間の取引の値段の一定額を税金として納める
関税は輸入した企業が負担する税金
販売価格が上がるため、実質的に負担するのは顧客
関税をかける目的
国が輸入品に対して関税をかける目的は大きく分けて3つあります。
- 国内産業の保護
- 財政収入の確保
- 貿易交渉のカード
国内産業の保護

関税が無くなると、国内の産業の競争力が落ちることが考えられます。
例えば、中国や東南アジアなどの人件費が安い地域、アメリカなど大規模の土地を利用して生産された農産物が輸入されると、国内の農産物が売れなくなり、事業を辞める農家が増え、産業の衰退が進みます。
この現象を防ぐため、産業が国際的な競争力を持たない分野に対しては輸入品に対して関税をかけることで衰退を抑制します。
財政収入の確保
関税は一般財源として幅広い用途に利用されています。
かつて1930年代までは重要な財源として利用されてきましたが、経済のブロック化を招き第2次世界大戦を引き起こした過去から、枠組みが見直され、税収に占める割合は低下しています。
貿易交渉のカード
国内の経済規模が大きい国は貿易交渉のカードとして、関税をかける例もあります。
2025年のトランプ政権では世界各国に10%以上の関税をかけ、現在でも関税引き下げに関する交渉を実施しています。
日本企業の関税の引き下げのメリットは大きいため、アメリカ側としては自国に優位な条件で交渉を進めることができます。
2024年から2025年にかけての日米の関税推移
対米の関税は2025年3月までは平均1.4%なのに対し、4月には9%まで上昇しています。
これまでは「日米貿易協定」で、農産物、工業製品について関税が引き下げられていました。輸出額が大きい品目の関税推移を解説します。
自動車

2020年の頭に日米貿易協定が発表され、2.5%の関税が適用されました。
2025年になりトランプ大統領の大統領令によって4月から25%まで上昇しました。
7月には間税引き下げ交渉によって15%となっています。(8月現在)
半導体

半導体も自動車と同じく4月に25%に引き上げされた後、7月に15%に引き下げられています。
しかし、8月15日のトランプ大統領の発表で、半導体の関税について200%〜300%へ引き上げる可能性があると述べました。
6日には100%の関税を課すと表明していたため、さらに引き上げを示唆しています。
【貿易摩擦】関税が上がった背景
関税が上がった理由はトランプ大統領の再選による影響が大きいですが、なぜトランプ大統領は関税を高くするのでしょうか。
その理由は下記の3つです。
-
- トランプ大統領の支持者の影響
- 貿易赤字の解消
- 中国への圧力
トランプ大統領の支持者の影響
トランプ大統領は2024年の大統領選において「アメリカ第一主義」を掲げました。
低所得者層の白人と高齢者から多くの支持を受けて当選しました。
アメリカでは多額の貿易赤字となっていました。
安価で高品質な製品が入ってくることにより、国内企業の製品が売れなくなることが考えられます。
そのため、トランプ大統領は関税をあげて、アメリカの企業の物が売れやすい状態を作り企業を守るという目的があります。
それによって関税をはじめとした、米国の企業の優遇措置が取られ、反対に米国以外の国の企業に対して冷遇するような方針の政策が多く取られました。
貿易赤字の解消
アメリカはこれまで多額の貿易赤字を抱えていました。
アメリカ以外の国はアメリカで稼いだ黒字分が自国の経済を支えていました。
アメリカの企業は様々な国に進出し利益を出すことで赤字分を相殺できていました。
しかし、近年の金利上昇によって利払いへの懸念が大きくなってきています。
そのため、貿易赤字を解消するために関税をあげていると考えられます。
中国への圧力
アメリカの貿易赤字が最大の国は中国です。
2024年にはおよそ3000億ドルの貿易赤字となりました。
政治的にも中国の安価な製品に依存している状態からの解消を狙った形になりました。
また、中国の企業の利益を下げる狙いもあります。
自動車を中心に技術発展が著しい中国に対して、関税をかけることで、利益を押し下げ、新しい技術に対する投資額を少なく抑えようといった背景もあります。
【売上減?】企業・市場・消費者へのインパクト
影響が大きい業界は?
自動車業界
日本の基幹産業である自動車業界が一番影響が大きい業界です。
これまで日本の自動車メーカーは、人件費の安いメキシコの工場で組み立て、アメリカへ輸出する方法で利益を上げてきました。
関税が上がるとアメリカの中で組み立てを行わないと原価が上がってしまいます。
そのため、商品の価格を上げなければならない等の影響が出てきています。
アメリカでの生産量を増やすなどの対策が進められていますが、
2025年第一四半期の決算では日本の全ての自動車メーカーで減益と発表されています。
影響が小さい業界は?
IT業界
無形サービスを提供するIT業界は関税の対象外となります。
自動車などの有形のものの買い控えが発生すると考えられるため、
IT業界に対しては追い風となる企業も増えることが考えられます。
金融業界
金融サービスにおいてもあまり影響がありません。
金融業界において、減益となる要素は
・景気の減速
・低金利
であるので、今回のトランプ関税の影響は小さいです。
また、証券会社は株の売買手数料が主な収益となるため、トランプ関税による株価の上下で売買の回数が増えることが考えられるため、増益になる要素もあります。
物価への影響は?
物価は全体的に上がると考えられます。
8月7日から15%に引き下げられたとしても高い状態が続いています。
短期的には関税の直接的な影響は少ないですが、半年以上この状況が続くと、物価も上がってきます。
自動車に絞って説明します。
自動車価格が上がるステップは下記です。
- 関税影響によりアメリカで利益が出にくくなる。
関税が上がると企業は物の値段をあげるか薄利で売るかを強いられます。
値段を上げると売れる台数が減るため結果的に利益が圧迫されます。 - 企業全体の利益を保つためにアメリカ以外でも値上げをする。
自動車メーカー全てで減益が発表されましたが、企業側は年間を通して計画通りの利益を上げるため、日本をはじめとした地域でも値上げをする可能性が高いです。
まとめ
関税は私たちの関わらないところで変わっていきます。
私たちにできることは適切に状況を把握し、対処することです。
このブログでは難しい経済ニュースを論理的にわかりやすく解説しています。
少しでもお役に立てるとありがたいです。
対策ができるのか
物価が上がり家計が苦しくなるけど対策ってできるの?
そう思っている方は多いと思います。
インフレの社会である以上物価は上がり続けるため完璧な対策は難しいですが、ある程度対策はできると考えています。
利益を上げてくれる企業に対して投資をする
今回は関税の影響が小さい業界の企業に投資をすることで、配当金が安定するため対策の一つになります。